2025年は戦後80年の年です。実際に戦争を経験した人が少なくなる中、当時の記憶を伝えてくれるのが手紙や生活雑貨などの「戦争資料」です。この戦争資料を収集し展示している男性が高知県芸西村にいます。
(野中麟太郎 記者)
「こちらの品々は全て戦時中に使われていたものになります、戦後80年が経った今では貴重な資料となっています」
軍隊で使われていた茶碗や海軍海兵団の卒業アルバム。芸西村文化資料館では戦時中の手紙や雑貨などいわゆる「戦争資料」を主に村内から収集しています。
たとえばこちらは当時の一般の人が着ていたという国民服。80年の時の経過を感じさせないほどしっかりとしています。管理・収集しているのは堀田幸生(ほった・ゆきお)さん(71)です。
(芸西村文化資料館 堀田幸生さん)
「これは軍人傷病記章、胸に貫通銃創で傷になって大変やったねというための記章ですね」
9年前から資料館の企画員として働いている堀田さん。当時、すでに村内での戦争資料の収集が難しくなっていたため、より難しくなる前にと独自に収集を始めました。
(堀田幸生さん)
「従軍して話をしてくださる方が96以上じゃないと、つまりほとんど生きてないという状態で、資料が集まりにくいですので、役場から出してる追悼式のお誘いの手紙の中に戦争資料があれば何かしら連絡してくださいという書面を一緒に入れて発送していただいて、お声がけをいただくということになってます」
集まった戦争資料は、もともと資料館にあったものも含めると現在およそ300点にのぼります。
こちらの分厚い本は芸西村出身の軍人らが現在の中国・上海で戦った様子を記録したもので、文章からは緊迫した戦場の様子がうかがえます。
「敵は逐次我ら包囲せられつつあり」
また、当時の空気感を伝える資料も。
「皇軍軍規の真髄はかしこくも大元帥陛下に対し奉る・・・」(東条英機元陸軍大臣の肉声)
東条英機(とうじょう・ひでき)元陸軍大臣の肉声が録音されたレコードです。
堀田さんはこれらの貴重な資料を「とにかく見てほしい」という思いで、毎年テーマを決めて企画展を行っていて、2025年のテーマは「戦後80年」です。
(堀田幸生さん)
「今までやってきた資料がだいぶたまってますので、1階の狭いところじゃなくて2階の広いところも開放して全品、戦争関係の資料が展示出来たらなと思って今考えてる最中です」
終戦から80年が経とうとしている今、悲惨な経験を語りついでいくことが難しくなっています。しかし高知の地方の小さな村、芸西村で集められた多くの「戦争資料」からは、「戦争」が確かに私たちの生活の中にあったことを感じることができます。
(堀田幸生さん)
「今も戦争のあるニュースを聞くんだけど、ただ聞くだけじゃなくて、目で見て確認できる、心にしみていくという大事な大事な資料じゃないでしょうかね」
「生活全般に戦争が染みわたっていたな、ということを見てもらいたいです。食器、新聞、レコードであったり、津々浦々なんで戦争一色になっていたんだということを考えてもらったら。普段の今の自分の生活に戦争がこんなにあったら嫌やろうなということを感じていただいたらいいかと思います」
堀田さん自身も71歳で戦後生まれということなんですけれども、小さな村からこれだけの資料がある、まだまだ各家庭に眠っている資料や証言などがあるのではないでしょうか。テレビ高知では戦争を体験した方や情報をお持ちの方などを探しています。